【社労士が解説!】障害年金を受給するデメリットとメリットとは?
はじめに
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に国から支給される年金です。
しかしその仕組みや受け取れる要件について、「難しくてよくわからない」という方も多いのではないでしょうか?
そんな方のためにこの記事では特に
「障害年金を受給した(もらった)場合のデメリットとメリットとは?」
という疑問に焦点を当て、障害年金専門の社労士が優しくわかりやすくお答えします。
※本来障害年金は障害状態に該当する方が当然の権利として「受け取る」ものです。当事務所では「もらう」という表現を避けておりますが、この記事では障害年金をより多くの方に理解して頂き、そして多くの必要な方に障害年金が届くきっかけとなるように敢えて「もらえる」という言葉も併記して説明いたします。
障害年金とは
まず障害年金の仕組みについて説明します。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。
どちらの対象になるかは病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに、
国民年金に加入していた場合(国民年金の被保険者となる前(20歳未満)や、被保険者資格を失った後(60歳以上65歳未満)である場合を含む)→「障害基礎年金」
厚生年金に加入していた場合→「障害厚生年金」
となります。
そして等級についてはそれぞれ
障害基礎年金・・・1級、2級
障害厚生年金・・・1級、2級、3級
となっています。
※障害厚生年金については等級に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)というものもあります。
●障害の程度の概要については次のとおりです
障害の程度 | 概要 |
1級 | 身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるもの。 |
2級 | 家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、 それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるもの。 |
3級 | 労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの。 |
障害手当金 | 「傷病が治ったもの」であって、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とる程度のもの。 |
障害年金を受給するデメリットとは?
障害年金を受け取る(もらう)ことによるデメリットについて、以下のようなものがあります。
該当する方は注意が必要です。
①他の制度と支給が調整される場合がある
●生活保護費
生活保護は国が生活に困窮している世帯に対して、憲法で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための制度です。
生活保護費と障害年金は併給できるのですが、いずれの制度からも満額支給されるのではなく、生活保護費が調整されて支給されます。そのためトータルの受給額は変わりません。
デメリットがあるというよりはメリットがないという表現が正しいかもしれません。
●傷病手当金
傷病手当金は、健康保険の被保険者がケガや病気を理由に会社を休んだ際に支給されるものです。しかし、障害厚生年金と傷病手当金、両方の受給資格がある場合には傷病手当金は支給停止となります。ただし以下の場合、調整はありません。
・「傷病手当金」と「障害年金」の支給事由が「異なる病気やケガ」の場合
・「障害厚生年金」ではなく「障害基礎年金」と「傷病手当金」を受け取る場合
また「障害年金の総支給額(障害基礎年金+障害厚生年金)÷ 360日」よりも「傷病手当金の日額」の金額が多くなる場合は差額分を傷病手当金として受け取れます。
●労災給付
労災給付は業務災害や通勤災害など、業務上の病気やケガによる休業に対して支給されるものです。障害年金を受給する場合にも労災給付は併給できますが、障害の等級に応じて73〜88%の割合で、労災給付の方が減額調整される仕組みになっています。
なお、受け取る金額の総計としては
障害年金+労災給付(調整後)>労災給付
となるため、これも調整されるとは言ってもデメリットととらえるものでもないように思います。
●児童扶養手当
児童扶養手当は、ひとり親家庭や、父または母に重度の障害がある家庭を対象に支給される手当です。児童扶養手当の支給対象者が障害基礎年金も受給できる場合、両方を満額受給することはできません。
この場合は、障害基礎年金の「子の加算部分」との比較となります。
まず障害基礎年金の子の加算部分が優先して支給されます。すなわち、通常通りに満額が支給されます。
そして、児童扶養手当については、
障害基礎年金の子の加算部分<児童扶養手当
となる場合のみ、児童扶養手当が差額分だけが支給されます。
差額がなければ、児童扶養手当は全額が支給停止となり、何も支給されません。
実は児童扶養手当については以前まで、障害基礎年金を受給している人は、児童扶養手当の受給要件に該当していてもほとんどの場合、児童扶養手当は支給されませんでした(全額が支給停止の状態)。
これは、「子の加算部分を含む障害基礎年金等の全体の月額」と「児童扶養手当」とを比較することになっていたからです。この比較方法では、現実問題として児童扶養手当の方が高くなることはありえず、差額が0円でした。これが令和3年に改正となり、現在のように「子の加算部分」と比較することになりました。
しかし気を付けなくてはならないのは、この制度について障害厚生年金3級の場合は改正による影響はなく、以前と同じように「障害厚生年金3級の全体の月額」と「児童扶養手当」を比較するということです。
つまり、3級に該当する方の場合はほとんど増えることがない場合が多いのです。
また、所得制限についても注意が必要です。
令和3年3月の改正後は、障害基礎年金等を受給されている方については、非課税の公的年金給付等(障害基礎年金など)を含めた上で所得を算出することになりました。つまり、障害基礎年金も所得として計算されてしまうのです。
これによって所得が多く計算されることになり、児童扶養手当の額が全部支給から一部支給に変更(減額)される場合もあります。
この所得制限については逆に3級の障害厚生年金については以前と同様に障害厚生年金の額は含めずに所得を算出します。
児童扶養手当については自分の状況でデメリットまで考えて申請を検討すべきです。
●老齢年金
日本の年金制度は1人1年金が原則であることから、65歳になった場合、障害基礎年金と老齢基礎年金・障害厚生年金と老齢厚生年金を同時に受給することはできません。どちらかを選択して受け取る(もらう)という流れになります。
ただし、障害基礎年金を受給されている方が老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給できるようになった場合には、65歳以降、障害基礎年金と老齢厚生年金を受給する、ということはあります。
②扶養を外れる場合がある
障害年金を受給する(もらう)場合、税務上は障害年金に税金がかかることはなく、非課税となります。
しかし社会保険の場合、扶養の範囲を考える場合「障害年金で得たお金に加えて、パート・アルバイトなどの労働収入で得たお金が180万円未満かどうか」で判断します。
障害厚生年金を受け取っている人の場合、障害年金の受給額だけで年180万円を超えるケースもあり、180万円を超えると社会保険の扶養から外れることを留意しておきましょう。
③寡婦年金及び死亡一時金が受け取れなくなることがある
障害基礎年金の受給者が、65歳前にご自身の老齢基礎年金を受け取る前に死亡した場合は、死亡後に本来ならその妻や家族に支給される寡婦年金や死亡一時金は支給されません。
④配偶者加給年金が停止となる
加給年金とは、配偶者がいる老齢厚生年金や障害厚生年金の受給者が対象となる加算で、一定の要件を満たしていれば年金に加算されるものです。
加給年金の対象となっている配偶者が障害年金1~3級を受けるようになると、加給金は停止され支給されなくなります。
しかし、加給年金が停止されても障害年金の金額のほうが大きく世帯としての収入は増えることになりますので、デメリットではあるもののメリットの方が大きくなります。
障害年金を受給するメリットとは?
では逆にメリットはどのようなものがあるのでしょうか?
①生活が安定し、心のゆとりが生まれる
障害年金はケガや病気が原因で日常生活や就労が困難な方を経済的に支える制度です。
年金という安定した収入が定期的に得られることで心にゆとりが生まれます。
このゆとりが、病状の回復に繋がる可能性がおおいにあり、実際受給が決定し、この効果を実感されていらっしゃる方は大勢いらっしゃいます。
②使い道が自由
障害年金は受け取った方が自由にその使い道を決める事ができます。
③国民年金の支払いがなくなる(法定免除)
障害年金の1級または2級を受給すると、国民年金の支払いは免除となります。これを「法定免除」といいます。
法定免除期間については年金保険料の半額を支払ったとみなして計算されますので、将来受け取る老齢基礎年金にも半額が反映されます。
しかしこれが障害年金のデメリットでもありそしてまたメリットでもあるのですが、半額しか反映されないゆえに将来老齢基礎年金を受け取る時も半額になってしまうのです。そのため、満額にしたいときは国民年金保険料を任意で納付することも可能です。
そして過去に遡って受給権を発生させた場合、遡及して法定免除となりますので、障害認定日以降に納付済の国民年金保険料は希望すれば還付を受けることができます。
なお、これも将来を考えて希望すれば還付を受けずその期間を保険料納付済のままにすることができます。
そして法定免除の対象は国民年金第1号被保険者のみとなりますので、会社勤めをしている厚生年金加入者や公務員の第2号被保険者、その第2号被保険者に生計維持されている配偶者である第3号被保険者は法定免除の対象外となります。
④税金がかからない
先のデメリットにおける社会保険料の項目で説明したように、障害年金には税金がかからず、全額が非課税となります。
お問合せください
ここまで、障害年金を受給する(もらう)うえでのデメリットとメリットということで
・障害年金とはどういうものかの説明
・障害年金受給のデメリット
・障害年金受給のメリット
について解説してまいりました。
障害年金を受給したいと思っている方はぜひ今回解説した内容を現在の自分と照らし合わせてデメリット・メリットを検討してみてください。
しかし、どれだけ調べてみても、実際に申請するとなるとやはり不安が残ってしまいますよね。
そしてもし障害年金の受給要件に該当したとしても、申請の仕方次第で障害年金の等級が思ったよりも低かった・・ということもあります。
また、障害年金の申請は決定に不服があった場合は、審査請求・再審査請求まですることができますが、それよって障害年金の受給が認められる確率は13.73%(令和4年度)となっています。(厚生労働省:社会保険審査会 年度別(再)審査請求受付・裁決件数等の推移)
つまり、最初の申請が非常に重要になってくるのです。
もし自分が受給要件に該当しているのに、症状に見合った障害年金が受け取れなくなるというのは非常にお辛いことだと思います。
私としても、1人でも多くの障害年金を受け取る権利がある方に症状に見合った障害年金をお届けして、みなさまの不安解消と人生を楽しむきっかけづくりをお手伝いさせていただきたいと思っております。
もし、今この記事を読んでいるあなたが少しでも症状が障害年金の要件に該当すると思ったら、障害年金専門の社労士に相談してみてください。
当事務所では、初回相談を無料で承っております。
私の持てる知識と経験を活かして、
みなさまの明日が少しでも明るいものになるように親身に寄り添い、真剣に対応させていただきます。
ぜひお気軽にご相談ください。
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